今回の記事では、オランダ生活の恩人である名物粋大家、その名もマウスについて書いていきます。
オランダに来てからこれまでの間、マウスには何度も助けられてきました。この1年はマウスあってのオランダ生活だったと言っても過言ではありません。
しかしこのマウスという男、ちょっとおかしいところがあるともっぱらの噂。いやね、捻じまがった嫌な性格をしているとかではないんだが、どうも変なんだ。いつも陽気で人当たりがよく、熱い心を持っていて、「困ったことがあったら遠慮せずになんでも言ってくれよな」が口癖の、まるで大海原のごとき器量を持つナイスガイではあるんだが、んーー、何かが違っている。まったくもって嫌な感じではない。しかし何かが違っている。この男から漂ってくるこの感覚は一体なんなのだろう。こう書いているまさに今も頭の中ではマウスの神秘的不可解さが輪廻輪廻‥‥‥あぁだめだ埓があかねぇ、この男の委細を語るより他はねえようだ‥‥‥
と、最近まで宮藤官九郎作のドラマ『タイガー&ドラゴン』を見ていた影響で、このドラマの導入部に特有の落語の語り口で書いているわけなんですが、頭がおかしくなりそうです。なので、やめます。
さて、いきなりなのですが、彼の名前はマウスではありません。ファーストネームの綴りをカタカナ読みするとモリスになります。
こちらに来てすぐの頃、マウスは家の中の細かなメンテナンスをするためにしょっちゅう家にきていました。ある日のこと、何か良いことでもあったのか、作業をしながら彼は「My name is Mouse!My name is Mouse!Hehe!」と明るく連呼していました。絶対モリスだよなと思いつつ、英語でモリスと読む綴りだとしてもオランダ語の場合だと違うのかもしれないと、「名前はマウスで合ってるの?」と一応聞いてみました。
すると、「Yeah!My name is Mouse!Like a Mickey Mouse!HeHe!」
と明るさも声量も2倍増しで返答してきたので、彼の名前はマウスでいいのです。
しかしつい先日、オランダ人の友人にマウスの名前の綴りを見せたところ「これはモリスだね」と言われました。ただ、本人がマウスと言うのなら仕方がありません。なぜマウスなのか、何ひとつ分かっていないし分かろうともしていませんが、彼の名前はマウスでいいのです。
さてそんなマウス、オランダに来たばかりのボクに色々なものを用意してくれていました。洗剤、柔軟剤、ゴミ袋などの生活必需品はもちろんのこと、寝具一式や食器類、調理器具はすべて新しいもので、さらなるギフトがてんこ盛りでした。
ということで、早速「マウスが私にくれたもの」を紹介していきます。
自転車(3台もある、たぶんどれも高くて良いやつ)
自転車大国として知られるオランダ。渡航前、自転車どうやって買おうかななんて考えていたのですが、買わずに乗れることに。
写真がないもう一台についてなのですが、さすが平均身長が世界一高いオランダ、サドルを目一杯下げても地面に足がほとんどつきません。危険極まりないので目下乗車拒否中です。
Mac(古くてとてつもなく大きい、そして重い)
デザイナーの人が会社なんかで使う、デスクトップ型の巨大Mac。業務用で機能性が良いために大きいのか、単純に古いモデルだから大きいのか、そんなことは分かりません。小学生の子どもくらい重いです。
コーヒーメーカー
アメリカのドラマ『ギルモア・ガールズ』のローレライ・ギルモアばりに主飲(しゅいん)がコーヒーのボクにとっては、言うまでもなく宝物です。フィルターコーヒーやエアロプレス用の器具がなかった移住初期に大変お世話になりました。
巨大スピーカー
「音楽は好きか?」と訊かれ、「うん」と答えた翌日に家に運ばれてきました。驚愕の重さです。去年の年末ごろ、マウスの友人も一緒に来てくれて男手3人でせっせと設置作業に勤しんだのが懐かしいです。ボリューム調整のつまみをほんの少しひねるだけで爆音が流れだすため、近所迷惑すぎて使えていません。
インターネット回線&Wi-Fi
行きたかったライブのチケットが取れずどんよりした日々を過ごしていると、知り合いから急に連絡が。
「ライブのチケット取ってたんだけど友達が都合悪くなっちゃって…このライブ興味ある?一緒に行く?」
「興味あるどころか…そのライブ実は…!!」ってなる出来事ですね。まさかの人物からまさかのプレゼントがもらえたときって嬉しいですし、この場合一度落とされてからあげられているので嬉しさが倍増しています。
ボクはオランダ到着日に携帯のインターネット接続がうまくいかず辛酸を舐めた経験があるため、ネットもWi-Fiも完璧に準備されていたことを知ったとき、マウスを崇めました。
アップルTV(四角形の機器)
正確な名前が分からないのですが、どら焼きくらいの大きさと高さで、テレビにつなぐとNetflix・Amazonプライム・YouTubeなどなどサブスク界隈のメインどころが楽しめる機器となっております。こちら、シンプルに贅沢品です。
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とまあ、他にも細々としたものがたくさんあり、今ではもっとすごいものをもらったりしているのですが、キリがないのでこのあたりで留めておきます。
まとめると、食材以外は全部あった。ということです。
ちなみに、家によっては不動産会社が用意する新しいシーツやカバーに追加でお金を払わなきゃいけないこともあるそうです。マウスの度が行きすぎていたために印象が薄くなっていましたが、生活必需品のほぼすべてがストックも含めて無償で用意されているのは当たり前ではないのだと思います。
もう少しだけ細かい話をすると、そもそもオランダでは借りれる家の種類が、家具付き・家具なし・スケルトン(床・壁なし)と3つあります。今回の家は家具付きタイプだったので、ベッドやソファ、冷蔵庫などが備わっていることは事前に分かっていました。
家具なしタイプは日本で家を借りるときの感覚と同じかと思います。「よし、屋根の下で暮らせる環境は整ったぞ。さあ何から揃えていこうか」の感覚です。
スケルトンはミステリアスです。入居後に汗水垂らして作り上げた床や壁を、退去するときにまた壊すのでしょうか。それともそのままにするのでしょうか。これまでスケルトンタイプの家が市場に存り続けてきたという事実からして、破壊説が濃厚です。真偽は不明です。が、住人の出入りのたびにいちいち破壊と再生が繰り返されるなんて、めんどくさおもしろい家ですね。
ええと、もうそろそろ終わりたいんですが、最後に。
現在、オランダでの生活が1年と少しを過ぎたところで、絶賛引越し検討中です。JITTERIN'JINN(ジッタリン・ジン)の『プレゼント』なみに「マウスが私にくれたもの」が多く、感謝し続けた1年だったのですが、今後のことを考えると引越しという選択肢も出てきています。
「引越し」や「今後のこと」に関係したマウスエピソードや、パーソナリティが浮き彫りになるマウスエピソードはまだまだあります。彼は話題に事欠かないやさしい変人なのです。
(全部詰めこむとかなり長い記事になりそうだったので今回は「マウスが私にくれたもの」を中心に書くことにしました)
では本当に最後に。
ボクがオランダに来てすぐのころにマウスが放った粋な言葉を紹介しておきます。
Don't think about something impossible, just think about something possible.
『できないことについて考えるな、できることについて考えろ』
みたいなことですね。偉人みたいだな、マウス。
あ、そういえば、大切なことを書き忘れていました。
「マウスが私にくれたもの」は厳密に言うとボクのものではありません。家具付きタイプの家は、家を退去するときに【借りたときの状態に戻す】ことが前提(契約内容に含まれている)です。つまり「マウスが私にくれたもの」は、実際はこの家に住んでいる間に借りている状態です。しれっと次の家に持って行ったりしたら怒られます。し、きっと怒られる以上のことが起きます。
みなさんご注意を。
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