そろそろオランダ移住を振り返ろうと思い立ち、先日こんな記事を書きました。
家探しにおいてどんな選択肢を持っていたか、気がかりだったことなど、移住を目前に控えていた当時のワクワク感&某国の大統領へのヘイトを思い出しながら、ギュギュギュッと凝縮してまとめました。
今となっては、ギュッくらいでよかったかなと。凝縮しすぎてカロリーゼロ理論記事です。
が、まあいいでしょう。そんなわけで今回は【オランダ渡航後】について、オランダに着いてから居住許可が取れるまでのスケジュール感にギュギュギュッと焦点を絞って振り返ることにします。
あ、その前に、ちょっとだけ横道にそれますね。
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夏の終わりと冬の始まりのちょうどまんなかのように思える今日。庭で日向ぼっこしながら本を読んでいただけで一日が終わろうとしています。
今日したことと言えば、コーヒーを飲む、パスタを作る、読書する、それだけ。ボクにとってはこのくらいがちょうどよくて最頂です。
ちなみに今読んでいる本は『NORMAL PEOPLE / ノーマル・ピープル』(著:サリー・ルーニー、訳:山崎まどか)で、日本からやってきた友人が届けてくれたものです。
活字が足りず喉が干からびていたので、本当にありがたい賜り物です。長い付き合いがあり、とても素面では語れないような恥ずかしい過去も知っているような-そんな過去がないことを願いますが-友人ですが、賜り物なんて仰々しい言葉を使っちゃうくらい感謝しています。
なので、この場を借りてお礼を言います。
何に抗っているのやら、とっとと電子書籍に乗りかえればいいものをオランダに来てまで頑なに紙の本を読みたがる面倒くさい人間に本を届けてくれてありがとう。
ちなみに彼女、ボクの髪とも長い付き合いです。変な意味ではありません。変な言い方なだけです。彼女は美容師で、もうかれこれ八年近く髪を切ってもらっているのです。
「はげないようにね」と髪をケアするトリートメントやらも渡してくれたこの御恩は一生忘れません。感謝です。彼女がいる限りボクは決してはげることはないでしょう。
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戻ってきました。本題です。
オランダに着いてから居住許可が取れるまでのスケジュール感についてまとめます。ものすごく簡単に書いていきますので、読んでいるときのおすすめの精神状態は「へ〜このくらいの時間がかかるんだ〜」くらいのゆるさです。
ということで早速、オランダに到着した2022年11月8日から仕事が始まった2023年7月までを図にしてみました。
①2022年11月〜2023年1月
ボクは移民ですが、こちらに来た時点ではオランダという国に正式な意味で認識されていません。観光ビザで旅行に来ている有象無象のうちの一人みたいなもんです。なので、居住許可証を受け取り、【オランダで生活している移民】として認識してもらう必要があります。
居住許可証をもらうための手続きは、こちらに来てから1ヶ月が経ったころに始まりました。
※前回の【回顧回顧のシューリンガン-オランダ移住を振り返る【渡航前編】-】で書いたように、移住にあたりエージェントのサポートを受けていたので、手続きの予約はすべてエージェント側がしてくれました。年末の移民局は例年混みがちということもあり、もし渡航したあとに予約をしようとしていたら手続きはもう少し後ろ倒しになっていたかもしれません。
この時期に思い出す出来事といえば指紋と顔写真登録。
当時、「社会人男性は短髪の方が好ましい」という、いまだにその明確な理由が分からないけど日本全体で共有されていて拒みづらい空気への反発か、ボクは人生で初めて髪を伸ばしていました。
そして顔写真の撮影なのですが、自動車免許を作るときなんかと同じで、眉毛と耳を出すように指示を出されます。
撮影スペースには一人用サイズくらいの机が置いてあり、その上にはいま流行りの?羽のない扇風機みたいな縦長楕円形の新型の撮影機器がそびえたっていました。ただ、扇風機とは違って円の中には黒いスクリーンがはめこまれていて、机の前に置かれた椅子に座ると鏡のように自分の顔が映ります。
あれ、なんか見たことあるな、この人。鏡に映った自分を見た瞬間こう思いました。
ロン毛のセンター分けで、眉毛が太くて、目がグリッて感じで大きい。全体的に濃い。無表情だとちょっと太々しい。
こんな髪型で白いバンダナを巻いている人がいたような……いやいや、さすがにワカチコは違うだろう。一瞬だけ頭の中に浮かんだゆってぃが消えていきます。ゆってぃはハッピーだ。ゆってぃみたいな形(なり)だけどもっと哀愁が漂っていて日常の細かいあるあるを無表情で連発する人……
そうだ、ふかわだ。
過去にあるあるネタでブレイクしたお笑い芸人ふかわりょうだ。圧倒的にふかわ。疑う余地もなくふかわ。誰がなんと言おうとふかわ。これほどまでにふかわだとは。ふかわの双子の弟だと名乗ってもいいんじゃないか?
という塩梅で、今のところ2年間有効なボクの居住許可証の顔写真にはふかわりょうが写っていて、こちらオランダではふかわりょうとして生活している次第です。
②2月〜4月
ボクがオランダでふかわりょうとして認知されてから約2ヶ月後、通称KVKと呼ばれる商工会議所にて事業登録を行いました。KVKでは【新しく作った会社&その会社が行っているビジネス内容】を国に認識してもらい、そうすることで正式に事業を始めることができます。
※オランダ語ではカーフェーカー(KVK)と言います。
登録したのはボクの妻で、彼女はこの日から自営業者-会社を作るといっても専用オフィスや社員が必須というわけではなく、個人事業主として事業の登録が可能-として仕事ができるようになりました。
※会社の所在地は自宅の住所でも可。ただし、事業の種類によっては家の住所を会社所在地として使えない場合もあります。家を探すときは事前に「事業登録が可能かどうか」を確認しておくことが大切です。
渡航してから仕事ができるようになるまで約3ヶ月。妻は行動力と度胸がボクの1000倍くらいある人なのであっという間に仕事先を見つけてしまいました。彼女のすごさやタフネス、すばらしい危うさなどについてここで記すことはしませんが、とにもかくにも、畏敬の念を感じずにはいられない人です。
【個人事業主のパートナー】として居住許可の申請をしていたボクの方は、3月29日に居住許可証を受け取るまでは仕事ができませんでした。
居住許可を受け取り、やっと仕事ができるぞーと意気込んでいたのも束の間、4月になってすぐに、個人事業主である妻宛てに「税金を納めなさい」という脅迫手紙が届きます。
ボクは大学を卒業してすぐに会社員になりました。個人事業主としての経費や収入の計算、税金の申告なんて、それが日本国内のことですら知ったこっちゃありません。ここで一旦プチパニックに陥ります。
「カモン会計士!カモンカモン!」少しでも早く会計士を見つけたいという焦りで変なギアが入った自分をなだめつつ、できるだけ多くの情報を集めた上で好条件の会計士を探したいという「NO!妥協!許さない!妥協!」の自分を主軸に調査を開始します。
英語、オランダ語、日本語3つのを言語を駆使してネットを漁り、サポート内容と料金を表にまとめ、比較し、SNS上でオランダにいる日本人先輩の助けを借りつつ、なんとか4月中旬には会計士と契約を結ぶことができました。
人生初の税金申告がまさか日本ではない国だなんて、これまでの自分では考えもしなかったことですが、人間必死になればなんとかなるものです。
そして、助けていただいた先輩、ありがとうございます。
仕事を探し始めて、面接し、受かったから仕事が始まった。5月〜7月はこんな感じです。
すこし細かく説明させてもらうと、6月の初めにイタリア旅行に行ったので、その前後は面接やトライアルの予定を入れていません。なので仕事を探していた期間は実質1ヶ月半くらいです。
※トライアルとは面接後にある試用期間(お試し仕事)のこと。試しに現場で働いてみることで、雇う側は「この人は求人条件に見合った人材なのか」、雇われる側は「この仕事は自分にマッチしているか」などを確認できます。
それと、一つだけ仕事に関して驚きの経験がありました。仕事そのものというより、仕事に対する考え方と言った方が正確かもしれません。
とある仕事に応募し、マネージャーと面接をしたときのハナシ。
「ボクがやりたいこと」を徹底追求され、「あなたが本当にしたい事とこの仕事がマッチしているかが一番大切よ」と何度も何度もくり返され、「ここがあなたの理想の職場、つまりやりたいことを実現できる場なのかを確かめる必要があるわ、それをあなた自身が確かめるのよ」とトライアルの日にちを設定されました。
ボクの頭には「この仕事がしたいんです!」と言って面接しにきた人にその仕事に就くかどうかの選択権を与えるという発想がなく、雇われる側が持つ選択の自由に驚き、そして雇う側が100%の選択権を持つのが当然と思い込んでいた自分の感覚を恥じました。
対等なんてことはありませんが、雇う側と雇われる側のパワーバランスの差が小さい印象を受けたのです。
ま、公平を期せばオランダにある会社や職場の全てが一様にこのような考え方でもって成立しているわけなんてないと思います。それに、法律や経済・社会構造などの要素を含んだ実際のパワーバランスは対等なんかじゃないはずです。
外資系企業(日系含むオランダ国外企業)もたくさんあります。それこそどこかの日系企業なんて日本人以外の社員が全員定時に帰っていくなか、日本人社員だけが、上司がまだいるからという理由で社内に残っているらしいです。
わざわざオランダにまで来て、面倒な法人手続きとか色々やって(知らんけど)世界一無駄な時間を発生させているなんて、日本のしきたりとかルールってつくづく意味がわかりません。
こちらにいる人は「仕事するために生きてるわけじゃなくて、生きるために仕事してるんだよ」と何の気なしに口にします。彼らにとってはあまりにも当たり前の感覚なので、大袈裟に主張する必要がないのかもしれません。
ボクもこれまでにこの言葉を使ったことが何回かあります。しかしそれは多くの場合「訴え」であったように思います。たとえば、仕事するために生きているような感覚にしんどくなったり、そういう感覚を無意識にこちらにぶん投げてくる人間に対し、自分はそういう人間ではないと理解してもらおうと訴えるために、この言葉を使っていました。
なので自分にとってこの言葉は、まるで映画の決め台詞のように特別な意味を持っているような気がして、いまだに少し大袈裟に響きます。まだ本当の意味でこの感覚を持つことができていない証拠かもしれません。
ちなみに、この言葉を「訴え」として使った結果どうなったかというと、何か決定的なことが起きたとか、その日を境に何かが変わったとか、そんなことはありませんでした。次の日から相手の考え方が大きく変わった、なんてこともありません。
世界はいつもとおんなじ、通常運転です。
ひとりの人間が他者や環境に与えることのできる影響や変化なんてほんのわずかです。しんどさから抜け出したいとき、色々と方法はあれど、最終的には自分が変わるか環境を変えるかの2択なんじゃないかと思います。
ボクは引くほど頑固なので自分を変えることはしませんでした。そしたらなんかオランダに来ちゃってました。
とはいえ、何かが劇的に変わってすべてが最良に転じたかと言えばそうではありません。国が違うというだけで、そこには変わらず生活があります。
ひたすらに生活と向き合う日々です。そしてこの生活の連続がきっと人生です。ちなみに、ボクはけっこう気に入っています。
と、書きながら気づいたことがあります。英語の【life】という単語には「生活」、「人生」両方の意味が含まれていますね。英語を生み出した過去の人々、気づくのが早いな。
うんうん、ということで、オランダ生活を振り返ってみたんですが、日本を脱出するに至った思考回路に帰結し、生活っていいよねという感覚になりました。
メデタシメデタシ。
3月からオランダに移住するのですがリアルなお話が聞けてありがたいです!今後も読ませてください!
返信削除お返事が遅くなってしまいすみませんでした。ほんの少しでも参考にしていただけたら嬉しいです。
削除3月はまだ肌寒いですが6月にかけてだんだんと暖かくなり夏突入!というのが今年のオランダでした。良いタイミングでこちらに来られるのですね。
かなりマイペースな更新なのですが、これからも読んでいただければ嬉しいです!