さようなら世界 はじめましてセカイ

ひねくれ者でマイペースで陰キャラ

はじめまして、これがボクです。

こうして文字にしてならべてみると、よくもまあこれまで生き抜いてきたなと。処世の術がぽっくり抜き取られてしまったような人間ですね。

昔を思い返すと、「今したい」の衝動に勝てない子どもだったように思います。

給食が終わったあとの恒例行事だったボール遊びだか鬼ごっこだかのとにかくそういった男子全員参加的運動に誘われた時も、たとえそれが学校一の仲良しからの誘いであれ、後で行くねといって図書室でひとり江戸川乱歩を読んでいました。そのときのボクの「今したい」は江戸川乱歩の本を読むことだったわけです。

さらに、みんながやる気を出せばやる気が失せ、みんなのやる気がなければ人一倍やる気になる、とんだひねくれ者でもありました。

さらにさらに、大学に入学すると陰キャラという呼び名を与えられます。当時、明朗で親しみやすい人を陽キャラ、陰気で暗くとっつきづらい人を陰キャラ呼ぶような文化が広がり出したころ－今ではすっかり定着して陽キャ・陰キャなどと略されるほどですが－面と向かって陰キャラと呼ばれる有様でした。

さらにさらにさらに、これは親しい関係性という土台があってこその冗談だと互いに承知してはいたことなのですが、社会不適合者という立派な言葉もいただきました。

世渡り不上手。

社会に出たらあっという間に孤立するだろうと思いきや、実のところ、大人になって社会に出た後のボクは、出会う人のほとんどすべてに真逆の印象を与えていたと思います。

大多数のペースに合わせ、ハキハキと受け答えをし、陽気で軽快で、好青年なんていうカテゴリーに入れられることも多かったのです。

「ひねくれ者でマイペースで陰キャラ」なんて思われたことや－もしかしたら内心そう思っている人もいたかもしれませんが－少なくともそのような扱いを受けた覚えはありません。

一体全体なぜこんなことになったのか、それは

抜きん出ることなく、集団の一員として周囲と協力しながら、集団の価値基準に沿って行動することが、必ずではないにせよ多くの場合どのライフステージにおいても重要視されている

ということを子供ながらに、むしろ子供であるからこそ直感で理解してしまっていたからで

さらに

集団の一員として周囲と協力するためには、他者の立場に立って思いやりを持ち、どうすれば他者が喜ぶだろうかと常に考えながら行動することが必要である

と、別にまちがっているわけではなさそうですが、このような考えをまるで将軍に仕える下級武士の如き信念の強さで実行していたからだと思います。ようするに、勝手に御恩と奉公。

そしてそれの度が行き過ぎてしまったのです。

その結果、いつの間にやら本当の自分は消え失せ、昔からの付き合いがある人以外の前では常に擬態モード（と名付けました）で過ごすことになってしまいました。

そして今年、社会人になって数年が経ち、若々しくはないが成熟しているかと言われればそうでもなさそうな、なんとも言えない微妙な立ち位置にいる最中、限界点を突破してしまったのです。

正直に言えば、自分側を変えてしまえばなんてことはなく、あっという間に自分を取り戻せるとは思います。

ただ案外これが難しく、頭で分かっていてもいざとなると自分でも気づかない間に擬態モードに切り替わっています。最近では、擬態モードの自分をさらに外からもう一人の自分が冷めた目で観察しているような、ファンタジー溢れる感覚に陥るほどです。

とまあ、こんな調子なので何かしらした方がいいよなあと思い

日本を脱出することにしました。

今までの世界にさようなら

はじめまして、これからのセカイ

ということで、

世界、そちらはいかがですか。

そういうことなのであります。